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2~6ページ:特集「心のインフラ」天理スポーツ、天理のスポーツイベント

「心のインフラ」天理スポーツ

 昨年11月8日、てんりなまつりの前夜祭。市民会館では、天理青年会議所のコーディネートによりスポーツによる天理の街づくりをテーマに座談会が開かれました。登壇したのは、昨年惜しまれながら現役を引退されたオリンピック柔道金メダリストで天理市民栄誉賞受賞者の野村忠宏さん、世界中のアスリートやスポーツの最前線を取材し、スポーツによる街づくりにも詳しいコメンテーターの二宮清純さん、そして並河市長です。(司会進行:天理青年会議所少名子知雄さん)   天理スポーツのもつ可能性と街の課題 少名子知雄(以下司会) 先日天理市ひと・まち・しごと創生総合戦略が行政から発表されました。その中に天理市の人口構成がございますが、10代後半から20代前半が全国平均に比べかなり多いです。全国平均の倍ほどいらっしゃるという特殊な人口構成となっています。これは天理のひとつの大きな可能性ではないかと思っています。  また天理の魅力であるスポーツについてですが、天理はアマチュアスポーツのメッカといっても過言ではありません。柔道・ホッケー・ラグビー・野球を中心とした強化スポーツには輝かしい実績があります。  ラグビーワールドカップが終了した直後である10月17日、おやさと競技場に立川理道選手にお越しいただいてラグビークリニックが開催されました。また一昨年ですが、天理大学柔道部の穴井隆将監督と世界選手権チャンピオンの大野将平選手という世界トップクラスの選手が、前栽小学校6年生を対象に柔道教室を開いてくれました。  強化スポーツ以外にも、第22回ジャパンカップビーチボールバレー奈良まほろば大会が天理で行われたように、さまざまなスポーツイベントが開かれています。 並河市長(以下市長) 人口構造のグラフを見て若い街だな、希望がある街だなと思っていただけるかもしれませんが、注目したいのは20歳代後半から30歳代前半になると一気に人口が流出している部分です。市内の大学を卒業された人の7割以上が就職や結婚など様々なタイミングで市外へ出て行かれています。ですからこの割合を下げるだけで将来の人口予測がかなり変わってくるわけです。  市としては雇用環境を考えたり企業を誘致したりなど、これからいろんなことに取り組んでいかなければいけないわけですが、根底にある問題として、この街で暮らす豊かさって何だろうか、その豊かさはみんなで共有できているだろうか、というものがあります。  先ほど少名子さんが挙げてくださった市ゆかりのトップアスリートが子供たちに教えてくれるという取り組みは、他の地方都市ではなかなかないことかと思いますが、これが市民のなかで共有されているかというと、直接関係されている人とあまり関係されていない人とでは関心の差が非常に大きいわけです。ですから、しっかりとこの街が持っているコンテンツを可視化していくことが大事で、その結果この街で暮らし続けたいと思ってもらいたいです。  総合戦略をつくる過程で、大学生を対象に天理に住み続けたいと考えている人に理由を聞くと、天理が好きだからという回答がありました。さらに掘り下げていくと、音楽やスポーツなど地域に密着する活動がライフスタイルに組み込まれている人は、卒業した後、生駒市や香芝市より大阪に多少遠くても天理に住み続けたいという気持ちになりやすいのではないかということが見えてきました。 司会 潜在しているものを可視化して、有効なコンテンツにしていかないといけないということですね。  二宮さんは様々なスポーツの活発な地域を見てこられたと思いますが、外側から見た天理のスポーツについてどう思われますか。 二宮清純(以下二宮) あらゆるスポーツが強いイメージを持っています。天理高校、天理大学がその拠点にあるということが一つの理由だと思います。しかし学園都市である一方、その後就職や結婚などで天理市を離れられているということですね。私の地元で、若者が地元を離れる理由のアンケートがあったのですが、一番の理由はやはり「雇用がない」、次の理由が「街に娯楽がない」というものでした。つまり大事なことは、雇用を促進することに加えて、魅力あるまちづくりに取り組むことなんだと思います。  それは「心のインフラ」という、この街に住んでよかったと思える「何か」なのだと思います。そして、そこにこそスポーツの出番があるんじゃないでしょうか。  よく体育会系と文化系という分け方をしますが、スポーツだって文化です。世界ではスポーツの試合が終わったら、酒を飲みかわしたり、ダンスを踊ったり、バーベキューをして交流を深めています。つまりスポーツが核となり、その周辺の人達も楽しんでいるのです。 司会 この街に住みたい、住み続けたいと思える街を、スポーツを通じて作っていけたらなと思います。  学生時代を天理で過ごされた野村さんは、スポーツの環境について実感されたことはございますか。 野村忠宏(以下野村) 私は奈良県で生まれて、中学時代から天理中学校に入学し天理高校そして天理大学を経て、卒業後も現役を引退するまでずっと天理大学で練習させてもらってきました。  天理は柔道、ラグビー、ホッケー、野球などにおいて高校や大学で輝かしい成績を収められ、市民の皆さんの勇気や元気に繋がっていたと思います。しかし最近は柔道も野球も昔に比べて少し元気がなく、天理でスポーツをした人が卒業後に出て行ってしまうのは寂しく感じています。  若いときに天理で育ったアスリートが、卒業後にもこの地でアマチュアやプロとしてスポーツを続けられ、引退後は自分が経験したものを地域に還元できるような生涯スポーツとしての環境が整えば、天理で育ったアスリートとして嬉しいです。 司会 アスリートが生涯にわたりスポーツに関わって生きていける環境が整っていれば、彼らも街に残ってくれるのではということですね。   まち・ひと・しごとスポーツをつなぐコミッション 司会 天理のスポーツの可能性を感じるが、街のみんなが共有しているか、アスリートが引退後も街で活躍できるかという観点に立てば、まだ不十分だというお話でした。  今年5月に内閣府に対して一つの案を提出いたしました。(編集部注釈:日本青年会議所主催の地域再興政策提言コンテストにて全国2位に入賞)。まだ仮称ではありますが「天理スポーツコミッション」という、一つの機関を立ち上げて、一括した情報の発信や様々な要素の接着剤としての役割をできないかと考えています。スポーツと言えばまずは「するスポーツ」つまり「競技スポーツ」を思い浮かべると思いますが、スポーツコミッションでは、「学ぶ」「観戦する」「支える」「働く」という側面を踏まえながら産官学がリンクすれば、一つの経済圏のようなものができるのではないか、天理にはその潜在力があるのではないかと考えています。  全国的にスポーツが盛り上がっているこの時勢ですので、このスポーツコミッションのような事例も全国的にあろうかと思います。 二宮 コミッションそのものではありませんが、例えば新潟にアルビレックスというサッカークラブがあります。実はアルビレックスにはサッカーだけではなく野球やバスケットボール、ウインタースポーツのチームがあります。当初新潟にスポーツクラブを作ろうとすると、それは無理だという人ばかりだったのですが、今やアルビレックス新潟の集客力はJリーグの中でも4番目でして、2万人以上を集めます。友達どうしだけでなく、親子で応援に行く人も多い。親子3代で行く方もいらっしゃる。地元に健全な娯楽ができることで若者の流出を引き止める材料になったという話があります。  また、四国野球の独立リーグというものがあります。四国はジャコ天がおいしいですよね。休みは昼間からビール飲んでジャコ天食べて応援したいです。お客が来てくれれば街にお金が落ちるし、税収も上がります。皆がハッピーになれるのです。球場使用にはいろいろな規制がありますが、アミューズメント空間として快適に利用できないものか。スポーツには興味がなくても、おいしい物には興味がある人はいます。いい風景は見たい人がいます。  たとえば、独立リーグの試合を観て、道後温泉に入って、瀬戸内海の鯛めしを食べて、瀬戸内海で一番綺麗な夕日を見るというツアーを企画したらどうでしょう。老若男女誰もが楽しめるようにすべきです。つまりはもうスポーツ単体で押し出す時代ではなく、いろんな観光資源を繋げていく必要があるということです。 司会 スポーツがいままでのスポーツ愛好家だけのものではなく、より多くの方々の生きがいになったり、食と組み合わせることで観光素材になったりするということですね。  最近のスポーツの別の課題として、引退後の選手のセカンドキャリアがあります。野村さんは先日現役引退を表明されましたが、引退後の暮らしを充実させるためにこういう機関があればいいとか、同僚の体験談なども含めてありますでしょうか。 野村 大学までスポーツをやり通してきた人は、そのスポーツに対して思いが強く、全力でやり通すことでいろんなことを学んできています。それは選手の財産ですね。私としては、その財産を活かせる場所があればいいと思っています。トレーナーや医療現場など元アスリートが支える施設があるのが一番です。  自分は今のところマスメディアに呼んでいただいたり、指導のため国内や海外に呼んでいただいたりしていますが、やはり不安はあります。呼んでいただけるのは引退したばかりの旬である今だけ。5年後10年後には自分の軸をどこに持っていけばいいのかと正直不安があります。  セカンドキャリアの事を考えれば、競技人生中にもいろいろ準備が必要だと思いますが、世界一を目指そうと思えば余計なことを考えながらではなかなか世界は獲れないですから、セカンドキャリアを考えてくれる人達、サポートしてくれる人達の充実というのも大事かと思います。選手には自分でやってきたプライドがありますから、なかなか他人に不安を打ち明けられないという状況がありますので、選手たちが相談できる相手、機関、場所があればいいと思います。 司会 野村さんでも今後について不安があるということで、世界中にも引退後の不安を抱えている人は多くおられると思いますので、なにか「働く」ということでシステム化ができて、スポーツコミッションに組み込めていけたらと考えています。 二宮 天理のみならずだと思いますが、少子化が進んでいて、体育学部の生徒が皆教員に採用されるわけではない。子どもの数が減っていますから。教員になりたかったのに違う道に進まれる人が結構な数おられます。やはり大学で学んだことを地域で活かせるようにしたいですね。  現在、公立の学校では柔道や剣道が指導要領の中に入っているので教えられていますが、柔道の経験がない人が指導にあたって事故を起こすケースもあります。だったら柔道の経験のある人が学校に入って教えればいい、つまり地域と学校の垣根を無くす取り組みが必要です。伝統を守りつつ、変える部分は変えていくべきだと思います。   2020年に起こすイノベーション 市長 市民全体として応援する流れをつくったり観光や食、健康づくり、文化芸術活動など、他の資源とつなげたり、アスリートの皆さんが地域の中で役割を感じてもらったり、周りもそれを期待できるような環境に近づけていくことが大事だと思いました。コミッションというのが非常に可能性をもっているものではないでしょうか。 司会 市長が冒頭おっしゃった可視化が一つのポイントで、スポーツコミッションが天理の魅力を発信する一つの軸になればと考えています。  例えば「鍛える」という切り口では、様々な人がスポーツ合宿をしたいとき自己の希望する種目や日程や交流試合をマッチングすることもできます。「学ぶ」というテーマでは、プレイヤーのみならず、セカンドキャリアの形成も見据えて指導者の人を対象とした様々な企画をします。「支える」という意味では、病院や整骨院などと連携を図り見える化することで、選手が相談に行けたり、食の面でサポートができるように企画していきたいと考えています。 二宮 医療との連携はこれから大切になります。さきほど生涯スポーツというお話がでましたが、生涯スポーツと障害のある人がするスポーツは、実は繋がっていると思っています。  パラリンピック水泳でいくつも金メダルを獲った河合純一さんという人とお話ししたとき、彼は「二宮さんのような健常者は僕達障がい者の後輩にあたるんです」とおっしゃったのです。どういう意味かと言うと、健常者も年をとれば目が見えなくなるかもしれない、足腰が立たなくなるかもしれない、車いすの生活になるかもしれない、自分は大丈夫でもご家族がそうなるかもしれない。つまり、障がい者は健常者の未来の姿だというのです。それまで私も健常者のスポーツと障がい者のスポーツを分けて考えていたのですが、たしかに80歳90歳になれば誰もがどこかに悪いところを抱える。  オリンピックはイノベーションを起こすものです。1964年のテーマは「成長」でした。新幹線や地下鉄、あるいは冷凍食品が生まれました。2020年のテーマはパラリンピックも含め「成熟」ではないでしょうか。老若男女、障がい者と健常者、誰もが住みやすい街を実現するための新しい技術。福祉や医療や都市機能の充実、そこでの雇用。全部に共通して歯車を回せるのがスポーツの力であると思います。  今日は若く国際感覚のあるリーダーと世界的に著名なアスリートもいる天理市に、とてつもない潜在能力が秘められていると感じました。ぜひ日本をリードするようなスポーツコミッションを作っていただいて、皆様には日本のスポーツのみならず地方行政の模範になるようなリーダーシップを発揮していただきたいと思います。 司会 天理青年会議所では、天理はスポーツが長けているのでスポーツという手法を用いてまちおこしをしていきます。キーワードとして「繋ぐ」ということを意識しています。今日が故郷天理を「繋ぐ」記念すべき第一歩の日になればいいなと考えております。ありがとうございました。  

天理のスポーツイベント

 全国屈指のスポーツの街、天理。スポーツと一言に言うと敷居が高く感じる人も多いかと思いまが、専門性のある分野から気軽に参加できるものまで幅広く参加できるスポーツイベントが数多くあります。今回紹介するものは、ほんの一部ですが、さまざまなイベントがあります。   前栽柔道教室  天理大学柔道場で、前栽小学校の5、6年生を対象に、柔道体験が開催されました。柔道体験では、天理大学柔道部の穴井監督が指導にあたり、世界選手権代表の大野将平選手ら日本の柔道をけん引する現役6選手が模範演技を次々披露しました。   わんぱく相撲  相撲発祥の地である相撲神社にて、小学生を対象に、天理青年会議所主催の「わんぱく相撲」が開催されています。  各学年ごとに優勝者を決定し、優勝すると両国国技館で開催される全国大会への出場権が得られます。   天理ラグビークリニック  ラグビートップリーグチーム「クボタスピアーズ」の選手が、天理親里競技場で「天理ラグビークリニック」を開催しました。  参加者約300人にラグビーの指導を行い、クリニック後のサイン会では、ラグビーW杯でも活躍した立川選手などが子どもたちのサインに応じました。   奈良マラソンランニングクリニック  奈良マラソンのコース中で最大の高低差がある天理エリアを攻略するために「奈良マラソンランニングクリニックin天理」が、奈良マラソン実行委員会と市の主催により開催されました。   駅伝・ロードレース  毎年2月に、白川ダムグラウンドで市民体育大会の駅伝・ロードレース競技があります。  沿道には、力走するランナーを応援するため、観客は「頑張れ」と大きな声をかけます。ランナーは応援の言葉を力に変え、寒さに負けず気持ちよくコースを走ります。

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更新日:2016年02月01日