平成28年第1回天理市議会定例会 並河市長施政方針

議会

議会1

 平成28年度当初予算案の提案を行うに当たり、新年度における市政の展望と基本姿勢についての所信をあわせて申し上げ、議員各位並びに市民の皆様のご理解とご協力を賜りたいと存じます。 

はじめに(平成28年度は創生「実働」の年)

 平成28年度は、「実働」の年。これまで種をまき、芽を育ててきた案件を、一歩ずつ着実に結果、「果実」につなげ、市民の皆さまにオール天理での街づくりを「実感」いただき、そして地域全体での活性化の機運を更に高めるべき年と位置付けて参ります。平成27年度、私どもは産官学に加え市議会、金融、労働、言論界、教育及び医療等の有識者各位との協働により、「天理市まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定致しました。
 平成26年度以来、議会及び市民の皆さまにもご参加いただいてきた天理駅周辺、南部、高原の「街づくり協議会」での議論を行っており、また、北部櫟本では市民主導の活性化の取組みも進んでいます。さらに、財政措置も含めた県市連携、定住自立圏構想をはじめとする近隣市町村との連携、天理大学等との連携など様々なパートナーシップを強化する体制も着実に進展してきました。
 このように多様な主体との垣根を越えた連携のもと、教育福祉や交通アクセス整備、行政改革等を含む諸施策を、「個別」のプロジェクトとしてではなく、全体として「つながり」を構成するように再定義しました。
 そして、本市の人口動態分析をまとめた「人口ビジョン」から改めて浮き彫りになった、人口流出の実態と原因、各地域での世帯状況の変化などから抽出した課題に対し、本市の「強み」と「魅力」を活かしながら、雇用・所得の確保、現役世代の転出抑制、少子化対策、地域や家族で支え合うコミュニティ機能の回復といった諸要素に、好循環を創出するため、今後5年間で私どもが実働していく政策パッケージを示したものが、「創生総合戦略」でございます。
本市戦略は、
1.地域資源と新しい技術・多様な働き方を融合し、安心・充実して働ける場を創出する
2.天理ならではの魅力を活かし、新しい人の流れを作る
3.子どもを産み育てたい人の希望が叶う、選ばれるまちになる
4.垣根を越えた連携・協働で、暮らしやすく、住み続けたいまちをつくる
  の4つの柱で構成しています。

 近年、歳入の根幹である市税収入に直ちに大幅な伸びが見込めず、また市内の民間生産拠点が閉鎖され今後の市歳入に対する影響が避けられない等の状況を冷静かつ客観的に分析すれば、戦略を実施するにあたり、「入るを量りて出ずるを制す」を基調として、持続性を重視した財政運営とのバランスをとることが不可欠です。また、市民の皆さまからお預かりしている公金は、例え10円でも1円でも「死に金」にすることは許されないことを肝に銘じて参ります。
 他方で、委縮した思考からは、本市の未来を切り拓いていくことはできません。狭義の本市「財源」の勘定のみに捉われることなく、他市町村や県との連携強化、あるいは「1億総活躍社会」の実現に向けた国の地方創生加速化交付金や地方創生推進交付金の積極活用により、施策の果実のすそ野を何倍にも広げ、「暮らしの充実」と「活性化」が「車の両輪」として力強く前進してきたと、市民の皆さまに実感いただける市政運営を図って参ります。

平成28年度天理市一般会計予算(案)

 かかる認識の下、議案第7号、平成28年度天理市一般会計予算(案)についてご説明申し上げます。
 一般会計予算額は、歳入歳出ともに256億1000万円、前年度比で11億6000万円、4.3%の減少です。
 歳入では、市税及び地方交付税は、増収になると見込んでいます。
 歳出においては、平成27年度は教育費や衛生費等にかかる大規模建設事業の施工により増加していた普通建設事業費は大幅に減少しますが、扶助費の増加に加え、特別会計等への繰出金、物件費、公債費等も増加が見込まれ、全体の規模としては減少となっています。

歳入

 それでは、まず、歳入からご説明いたします。
 市税は、個人市民税は若干の増収ですが、法人市民税は税法の改正により税率が下がったため減収となる見込みです。固定資産税は新築棟数の増加により増収となり、軽自動車税、市たばこ税、都市計画税も増収が見込まれ、市税総額は74億4000万円となり、前年度比7100万円、1.0%の増収となる見込みです。地方交付税は、基準財政需要額が増加するため54億6800万円となり、前年度比1億8800万円、3.6%の増収見込みです。
 国庫支出金は、都市計画街路事業等にかかる補助金が増加するものの、前栽小学校整備工事費の減少等により38億8500万円となり、前年度比1億5000万円、3.7%の減少見込みです。
 市債は、前栽小学校整備事業債、メディカルセンター建設事業債等が減少したため、21億9500万円で、前年度比15億1300万円、40.8%の減少となります。
 これにより、平成28年度末の一般会計の市債残高は、263億4900万円となり、前年度に比べて2億2200万円減少する見込みです。
 また、財政調整基金の取崩額は、7億8000万円となり、前年度比で3000万円の増加となりました。平成28年度末の財政調整基金残高は、現時点で約12億5000万円で推移するものと見込んでいますが、決算時は若干の積み増しがあるものと想定しています。
 なお、今後の公債費や民生費の伸びを考えれば、100%超の経常収支比率が直ちに改善すると期待することは困難です。他方で、本市特有の事情として、他自治体にない相当規模の寄附金は、経常収支比率の計算の上で「歳入」としてカウントされておらず、実質的な財政の硬直性では、概ね経常収支比率90%台中盤の自治体と同等であるのが現状でございます。もちろん、全国平均と比較すれば行政改革を含めた一層の改善努力が必要でございますが、累積債務残高や近年の実質収支等を見れば、全国でも屈指の財政難等と悲観し委縮することは適当と考えておらず、引き続きバランス感覚と緊張感をもって財政運営にあたることが重要であると認識しています。

歳出

 次に、歳出について申し上げます。
 目的別の歳出の状況をご説明しますと、歳出全体の39.0%を占めます民生費は、99億9100万円で、前年度比2億6400万円、2.7%増加しています。これは、障害者福祉及び児童福祉サービスの扶助費や学童保育所建設工事費の増加等によるものです。
 次に、土木費は、41億1700万円となり、前年度比7億2500万円、21.4%の増加となっていますが、これは都市計画街路改良工事費別所丹波市線や天理駅前広場等整備工事費の計上等によるものです。
 教育費は、26億400万円で、議員各位のお力添えによって前栽小学校整備工事が校舎本体の竣工等により、前年度比13億4700万円、34.1%減少したほか、衛生費についてもメディカルセンターの竣工等により、17億1700万円となり、前年度比5億5600万円、24.5%減少しました。

重点施策、主な事業

 以上、歳入歳出の全体像を俯瞰した上で、これより、創生総合戦略に基づき「これからも住み続けたいまち天理」を目指して掲げております重点項目についてご説明いたします。

1.「地域資源と新しい技術・多様な働き方を融合し、安心・充実して働ける場を創出する」

 第1の柱である「地域資源と新しい技術・多様な働き方を融合し、安心・充実して働ける場を創出する」の施策でございますが、戦略策定にあたっての市民意識調査の結果等から、改めて20歳代から40歳代の働き盛り世代の転出抑制を図る上で、地域を支える産業の振興をより力強く進め、雇用機会の創出、柔軟な「働き方改革」をつなげていく重要性が示されました。特に、本市は中小規模の事業者が多く、この点も踏まえることが必須であると考えています。
 2月にオープンした「天理市しごとセンター」では、奈良労働局や市内商工会及び事業者、金融機関や県内大学等と連携し、特に若者や子育て世代に着目した就労マッチング、創業・起業支援、企業立地支援を一体的に進めて参ります。また、「しごとセンター」を拠点として、市内産業の振興・競争力強化を図るため、特産品・商品の開発や販売促進・販路拡大の支援を強化するとともに、生活困窮者支援や、障がい者就労の促進、更生保護活動との連携など「しごと」と「福祉」を組み合わせた施策を展開して参ります。
 3月2日、本通り商店街の空き店舗を活用し、「産業振興館」がオープンいたしました。京阪神大都市への通勤アクセスが確保されているものの、乗り継ぎの都合により近隣都市よりも不便な本市にとって、場所や時間にとらわれない情報通信技術を活用したテレワークなどによる「働き方改革」を着実に進め、先進地となっていくことは、勤務しながら住み続けられる街をめざし、都市からの移住も促していく上で、重要な布石と捉えています。
 また、子育てや介護などのご事情により長時間家を空けられない等、就労を妨げる要因を緩和し、働くことを希望する全ての方の「しごと」を応援する街を目指して参ります。また、産業振興館1階をはじめ、商工関係者や地域の皆さまが共有できる「場」をつくった上で、「しごとセンター」と連携した就労、企業支援や観光、モノづくり、文化事業などの情報発信を行い、平成29年度の天理駅前再整備後も見据えた、にぎわい循環の創出を図ります。
 テレワークなどによる「働ける場」づくりと多世代交流を組み合わせた地域の活性化拠点は、旧福住幼稚園舎でも市内社会福祉事業団体であるNPO法人との協働により平成28年度オープン予定です。空き店舗や遊休施設を活用しながら、「しごと」「にぎわい」の創出を、福祉や子育て支援等と組み合わせる政策間連携の取組みを加速化させて参ります。
 また、このような取り組みの上に産業・ビジネス界における本市の存在感、プレゼンスを高める中で、改めて西名阪自動車道・名阪国道及び京奈和自動車道がつながる広域的な交通アクセスの利便性を活かし、名阪側道及び九条バイパスの整備事業による今後の市内の道路アクセスの改善を見据えながら、県や関係機関と連携し、新たな工業ゾーンや6次産業団地の設置検討も含めた企業誘致活動を強化して参ります。
 また、都市生活の利便性と農村・里山の豊かな環境が併存する「サトマチ」天理の魅力を産業・観光振興や移住促進につなげる上で、残念ながら潜在的なものも含めた耕作放棄地が拡大している現状に対して、市内農業を復興していくことは極めて重要な課題です。市内には、「村づくり」の先進モデルとして全国的にも評価されている南檜垣営農組合での取組み等が既に行われています。
 次世代への確実な経営継承と集落の活性化を図るため、農業委員会や農地中間管理機構、JA等と協力して農地の集団化や集積化に努めるとともに、「農業経営法人化等支援事業補助金」により、集落営農化や法人化を推進して参ります。
 市民が農業に親しめる新たな機会の創出を、放棄地対策とつなげることも重要です。市民農園や柿の木オーナー制度の促進に努め、柿の葉の活用など放棄地解消に向けた地域の取組みを応援するなど、あらゆる努力を組み合わせていきます。
 また、県市連携イベントの先駆けとなった「天理マルシェ」や、柳本や櫟本等での地域主導マルシェの取組みを、観光や文化行事とも組み合わせた農産品発信の機会として一層活用するとともに、ブランド農産品や6次産品の育成、販路拡大に努めます。鳥獣害対策の強化など、農村が直面する課題に対しても、引き続き着実に取り組んで参ります。

2.「天理ならではの魅力を活かし、新しい人の流れを作る」        

 第2の柱は、「天理ならではの魅力を活かし、新しい人の流れを作る」ことです。地方創生の主要命題は、大都市への人口集中の流れを変え、交流人口の増加、移住促進、定住強化等により地方への新しいヒトの流れを創ることです。
 地方自身が、何が「強み」で、何が人口流出の原因かを直視した戦略を実行してくことが不可欠であり、処方箋は自ずから異なります。本市は、市政発足以来の歩みを見ても、単なるベッドタウンではなく、市内で生業が営まれてきた街です。私達自身、本市を京阪神都市圏の「外縁部」と位置づけ低く評価するだけでは、これから「住む街」を選ぶ市内外の皆様から高い評価を得ることは出来ず、市の未来は開けません。諸先達によって育まれた天理の魅力、様々な魅力を私たち自身が再認識し、明確な意図をもって、天理で暮らすこと、天理で子ども達を育むこと、第二の人生を送ること、訪れること等の「豊かさ」や「価値」は何か、を可視化し、伝え、経済効果につなげていくことが必須です。
 天理駅前整備事業は、いよいよ4月から広場本体の工事に着手していく予定です。本プロジェクトは、これまでに、県市連携協定を県内39市町村の第一号として締結するきっかけとなり、市内の交通の流れを根本から変える名阪側道の拡幅事業、九条バイパス事業が、国県との間で進められていく契機となってきました。九条バイパスは、「まちづくり連携協定関連道路」の新規整備事業として明確に位置付けられており、道路アクセス向上によって企業立地、防災・救命、周遊観光などに期待できる波及効果は、広場整備にかける本市投資を遥かに上回るものであると認識しています。
 また、車移動の主動線が移動することを見据え、近鉄沿線の駅ごとの機能を再定義し、二階堂駅及び前栽駅を生活動線に密着した駅として、歩行者や車いすの方、自転車での通勤通学などの利便性向上に着目した整備を図っていく一方、天理駅は車移動、二次交通と列車を結ぶ拠点と改めて位置付け、駐停車場の拡充を先行実施するなど、市盆地部全体の「立地適正化計画」の構想に発展しています。
 他方で、天理駅前整備は「手段」であって、「目的」ではありません。ハードを新たに整備すること自体は、本市の創生総合戦略において、何ら「目的」ではない、ということを改めて申し上げます。
 本市には、子ども達がのびのび遊ぶ遊具や芝生が充実した外遊び空間が大都市圏と比較しても明らかに不足しており、テレビやテレビゲームにふける時間が全国平均よりも大幅に長い、そして一方的な情報のインプット、遊び等を通じた双方向のコミュニケーションの不足は、理解したことを自分のコトバで書き、伝える「アウトプット」の力が全般に低いという学力上の弊害に繋がっていると認識しています。この課題は、新教育大綱に基づく学校施設・グラウンドの開放事業でも重視しており、平成28年度にはまず山の辺幼稚園の園庭を芝生化し、遊び場の充実を図っています。都市の中心に遊び場を創出する、そして学生や休日の子育て世代が子ども達と一緒に過ごせる空間があることが、生活の質向上につながっていくことを示します。
 天理駅南団体待合所には、絵本などを多く配置したキッズスペース、授乳室、おむつ交換室などを設置し、子育て世代にとっての利便性を向上させ、創生総合戦略第3の柱に位置付ける「子育て世代すこやか支援センター」をはじめ、さまざまな子育て施策との連携や情報発信を行う考えです。
 また、健康遊具をこれまで市内の各公園に逐次整備してまいりましたが、一カ所に配置されている数や種類は少ないのが現状です。天理駅前広場では集中配置し、天理大学と連携して健康講座等と組み合わせた事業を実施していきます。これにより、健康遊具の使い方の周知を図り、高齢者の活動が活発な他の公園での配置につなげます。また、介護予防等の事業は、新メディカルセンターでの事業とも連動させる考えです。
 これらの施策により、多世代が日常的に集まれるよう設計したオープンスペースの中で、文化芸術、スポーツなど本市ならではの「強み」にもつながりを創出していきます。
 本市では、平成27年度から文化芸術、スポーツ等を産業・観光振興や健康づくりなど他の施策と一層連携させるため、機構改革も行ってきました。しかし、市民会館や文化センター等をはじめ、市内各地ですばらしい活動が積極的に行われ、直接の参加者、そして近親者やリピーターなど「高関心」の皆さまがいらっしゃる一方、活動の存在もご存じない方も多くいらっしゃり、ギャップが激しいことも残念ながら事実です。
 様々な取り組みも、個々の活動に留まってしまい、市全体としての賑わいや豊かさの形成に十分つなげられなければ、街全体としては、こんなもったいないことはありません。
 ステージを含む天理駅前広場全体を様々な文化芸術、スポーツ活動やビジネスにも開放し、市も共に広報発信に努め、自分の身近にこんなアクティビティがあったのかという「気付き」から、参加者の裾野拡大や他の活動との連携に結び付けていくことを図ります。そして、市民会館や文化センター等の施設、本通り商店街から市全域へと、その効果がつながっていくように、既存イベントも再編やあり方の見直しを行って参ります。
 平成28年度には、ハード整備と並行して、これらのソフト事業を充実させるための企画準備を「街づくり協議会」を中心に行い、広場の建設現場を活用したパイロットプロジェクトも実施したいと考えています。
 また、平成29年の広場完成後を見据えて、「ムジークフェストなら2016」「奈良県大芸術祭」「第32回国民文化祭・なら2017」「国際芸術家村構想」等の県事業との連携を図るとともに、「なら国際映画祭」とのコラボレーションや、市内の各学校等が参加する全国・世界レベルの各種大会のパブリックビューイングなども検討して参ります。スポーツを街全体で応援する空気を醸成することは、ラグビーワールドカップや東京オリンピック・パラリンピックのキャンプ地誘致を目指す上でも、重要であると考えています。
 次に、創生総合戦略の第一の柱「地域資源と新しい技術・多様な働き方を融合し、安心・充実して働ける場を創出する」と密接に関わるプロジェクトとして、「観光資源と連携した天理の地場産品競争力強化事業」を地方創生加速化交付金事業として実施いたします。
 平成27年度、地方創生先行型交付金事業として、全国各地の地域おこしで活躍され、経済産業省が主催する「グッドデザイン賞」審査員なども務める服部滋樹氏に「天理市ブランディングプロデューサー」に就任いただき、本市の自然や歴史、文化などのライフスタイルや観光の観点からの魅力を、6次産品や工芸品などのブランド構築につなげるためのモノづくりセミナー等を実施してきました。
 平成28年度には、より一体的なシティプロモーションを行い、総務省が移住交流情報の一元発信のため設置した「移住・交流情報ガーデン」で発信する映像を含めたコンテンツ開発や、地場産品の商品開発・販路拡大支援を実施いたします。
 また、山の辺の道を基軸として、農業やトレッキング、サイクリングなどを組み合わせた周遊観光の促進を図る中で、展示品が一部老朽化・故障している休憩施設「トレイルセンター」を、改めて桜井-磯城3町と結ぶ「日本の源流トライアングル」の一角、また龍王山登山口の拠点として位置付け、これらの機能をより一層充実させるため施設の改修を行います。同センターの従来の休憩機能を強化し、「食」を含めた地域の地場産業の発信や、天理駅前と連携した観光促進事業等を指定管理者制度により運用していく考えです。
 民間と連携した、観光コンシェルジュ機能や周遊観光の促進、食と農の発信は、天理駅前広場や新櫟本公民館事業でも重要な要素と位置付けています。とりわけ天理駅前広場では、地元金融機関の投資効果拡大を目的として、総務省が所掌する地域経済循環創造事業の枠組みを活用し、「食と旅の拠点」を民間事業者及び地元金融機関と連携して整備する予定です。
 これまで、パイロットプロジェクトとして実施してきた「天理マルシェ」では、市内学生のコンサートを聴きに来られた方が、地元の農産品を買う、またはその逆などの相乗効果が既にみられました。天理駅前広場だけでなく、これから新たに拠点に位置付けていくあらゆる空間において、そのようなつながりを重視し、食育推進や障がい者雇用の促進などの他の施策とも合わせて参ります。
 また、これらの施策を実施する上で、本市単独の取組みでは対外的な発信力は限られます。奈良から明日香までを結ぶ南北の大きなルートに「源流トライアングル」を位置付け、日本の原風景と出会えるエリアとして「ヤマト」をブランディングしていくため、県や、桜井市及び磯城3町との連携を強化していきます。奈良から石上神宮をつなぐ「山の辺の道北ルート」を含む周遊ルートの道標整備を行う他、九条バイパス事業とも連動し、田原本唐古・鍵遺跡方面に抜けるサイクリングロードを井戸堂校区・布留川沿いに整備いたします。これにより、市中心部から健康づくりの拠点である長柄運動公園まで、自転車や徒歩で子ども達も安心して移動できるルートが結ばれていくと考えています。

3.「子どもを産み育てたい人の希望が叶う、選ばれるまちになる」

 第3の柱は、「子どもを産み育てたい人の希望が叶う、選ばれるまちになる」ことです。安心して結婚・出産・子育てができる環境や地域の特色を活かした教育の充実は、現役世代に選ばれる街であるためだけでなく、出生率や地域コミュニティが持続可能か、あるいは未来を担う子ども達自身が、自己の体験を通じて将来暮らしたいと思えるかどうか等、様々な点に関わってくる問題であり、単に現在の子育て世代だけを裨益者とするものではありません。
 創生総合戦略策定にあたっての人口ビジョンから明らかになったことは、地域コミュニティの急速な変容です。
 人口減少や少子高齢化が顕著な福住校区においても、過去20年間で世帯数は増加しています。3世帯同居等の中、かつて家族内で支え合った環境は、今や核家族化、高齢者の単身世帯の増加等で大きく変化しています。各世代が孤立化し、地域の絆も希薄化しつつあり、子育て世代にとっては、育児に係る金銭的、時間的、そして精神的負担が両親だけに掛かっていった場合、出生率や家庭内での育児・教育などに大きな影響を及ぼすと考えています。これは、高齢者にとっても将来不安や、介護サービスなど「外部」の助けに頼らざるを得ない状況に陥るか否か、といった同様の構図になります。
 意識調査では、今後の同居や近居に対する高いニーズが見られ、かかる認識の下、第2の柱でも三世代同居・近居住宅の建替えや改修助成の制度を平成27年度に引き続き計上しています。
 他方で、全ての家庭に同居や近居を期待することは、必ずしも現実的ではありません。そこで、妊娠期から就学前後を通じて切れ目のない一貫した相談支援の体制を構築し、様々な子育て支援団体・グループとの連携を行い、子育て世代が地域で孤立することを防ぐ体制の構築が急務であると認識しています。
 地方創生加速化交付金事業として、休日応急診療所が市立メディカルセンターに移転後の空間を含め、保健センターと一体となった「子育て世代すこやか支援センター」として整備いたします。産後支援に専門知識を持ち、出産後から子育てが軌道に乗るまでの母親を支える人材「産後ドゥーラ」の育成を行う他、助産師等による出産後の不安定になりがちな時期のサポートを強化致します。また、専任の子育てコンシェルジュを配置して、時期に応じた適切なアドバイスや支援を行うとともに、関係する機関部署との橋渡し役を務めます。また、乳幼児を同伴できる集い・遊びの場や、各種グループが自由に活用できるスペースを設け、子育て世代間の絆づくりの場を創出します。天理駅南団体待合所の整備事業でもキッズスペースを充実させ、これらの施設間でのソフト事業の連携も図っていく考えです。
 また、健診などをはじめ個人の情報に合せた子育て情報をスマートフォンで提供できる「電子母子手帳」の導入や、従来の保健センターとの一体運用による手続き・届出のタイミングを逃さない情報提供を行い、親子で楽しめる子育て教室や地域で行う出前保育などの市事業についての発信を強化します。あわせて、イベントや地元行事等に乳幼児同伴で参加しやすいための「移動式赤ちゃんの駅」も各主催者と協力して設置していきます。
 これらの施策により、少しずつ時間的、精神的な余裕が生まれ、就労を希望する母親等に対しては、「しごとセンター」、また「産業振興館」のテレワーク事業などによる就労支援を行う等、政策間の連携も重視する考えです。
 また、平成27年度の嘉幡保育所の新園舎整備に引き続き、民間保育所の整備補助を行う他、幼稚園での長時間預かり保育事業を新たに柳本幼稚園で行う等、幼保双方での体制強化を図って参ります。
 子育て世代の経済的な負担軽減の点では、第4の柱で申し上げるゴミ処理事業の広域化によるスケールメリットを市内の福祉増進につなげるべく、通院にかかる子ども医療費助成の中学までの拡大を平成28年8月から実施いたします。また、ひとり親家庭等の医療費助成や、保育所・市立幼稚園にかかる多子世帯の保育料の軽減、私立幼稚園保育料にかかる就園奨励費の助成等を継続実施して参ります。
 次に、平成27年度策定した教育大綱では、創生総合戦略における街づくり事業との連携を重視しています。地域資源を活かした豊かな教育、地域参加による学校づくりを進めていくことは、子ども達自身にとって天理で育つことに固有の価値を付与するだけでなく、子ども達との交わりを通じて希薄化する地域の絆を回復し、高齢者を含めた地域の皆さまも元気になる等の相乗効果が期待されます。また「顔見知り」を増やし、子ども達を見守ることが可能な関係をつくることは、学校外を含めた地域の中で、子ども達の安全確保につながります。ひいては、過去において家庭や地域との間で分担できていた道徳や生活習慣を含めた広義の教育が、小中学校の教職員に過度に掛かり負担となっている現状を改善し、教科により集中できる循環をつくる上でも重要であると認識しています。
 また、小中学校は概ね小中学生が自分で移動できる範囲に分布している大型の公共施設です。運動施設や特別教室を含めた学校施設を、「地域のみんなの施設として、フルに活用する」ことは、目的別に細分化された多くの公共施設を全て維持管理することが、近い将来、本市に限らず財政的に不可能という状況の中で、地域コミュニティを支えるために不可避な施設です。
 このような視点に基づき、施設間に横串を通したファシリティマネジメントを徹底し、予算を効率化・集中化することは、教育施設としての本来の目的に沿って、学校が子ども達にとって安全で快適な空間であり続けるためにも、重要だと考えています。
 かかる認識は、文部科学省、国土交通省、厚生労働省をはじめとする国の関係機関が一致して、相当以前から示していたところであり、学校施設内における子ども達の狭義の安全確保や、現行運用からの変化が、保護者及び教職員の皆さまにとって過度の負担になることを防ぐ等の視点とバランスを取りながら、できることから一歩ずつ、本市においても積極的に進めなければなりません。
 今までと一緒で何がだめなのか、現在の運用でも学校現場は必死の中で、新規事業を考える余裕はない、職員の加配等を優先すべきだ等のご意見もあるかもしれません。それらの視点を否定する意図ではありませんが、地方創生が国全体として最優先課題となったのは、政治や行政の一方的な思いつきや都合ではなく、少子高齢化や人口の大都市圏集中などにより、特に地方都市にとって、教育を含めた行政サービスの基礎が急速に変わっている、地方コミュニティが今や崩壊の危機に瀕しているという非常事態の故であることも合わせて認識する必要があると考えます。
 生徒の減少により、東部高原地域に限らず、学校そのものの存続すら危ういかもしれない。これまで「常」であったことは、もはや「常」でもなんでもありません。一歩の遅れや様子見は、悪循環を将来なんとか好循環に転じようとする際の負担を何倍にもするか、あるいは手遅れにするか、いずれかです。総合教育会議の中で教育委員会と市行政が一つのチームとなり、地域や学校と協働して考え、創り、育てるという姿勢の上で、できることから一歩ずつ進めて参る所存です。
 平成28年度は、井戸堂小学校と、平成27年度末に竣工する前栽小学校の多目的室を、地域の登録団体の皆さまが活用できるスペースとして開放し、子ども達と地域の皆さまが空間を共有する機会の創出を図ります。また、井戸堂小学校では、放課後に学校の管理責任とは区別した形で、教育委員会の責任の下、また安全確保のための要員を配置した中で、放課後に多目的室及びグラウンドで子ども達が遊ぶことができる事業を、学童保育とは別途に実施します。特に、井戸堂校区では、旧村地域と新興住宅が混在する中で、新興住宅からの通学が大半を占めるようになっており、遊び場の確保とともに、高齢者をはじめとする多世代の地域との関係を構築することがねらいです。また、前栽小学校では、近い将来に通学予定の校区内の幼稚園及び保育所・園の児童に、保護者同伴の条件の下で図書館を開放し、読み聞かせなどの活動にも参加する機会を創ります。少子化の中で、兄弟姉妹が予め通学しているというケースも減少しています。入学前から保護者及び児童にとって学校施設に親しむことを可能にし、スムーズな就学の支援を図って参ります。
 在校生の安全確保、教室やプール等との動線の関係などを平成28年度に1年間かけて精査し、教職員や保護者の皆さまの不安を解消する運用方法を見出した上で、他の学校の特別教室等についても広げていきたいと考えています。
 また、放課後や休日休暇の子ども達の居場所づくり、有効活用について、老朽化や外遊び場がない学童保育の小学校敷地内への移動を進めて参ります。昨年度、手狭となった櫟本校区では、既に小学校校舎内に学童の一部増設を実施致しました。平成28年度は、山の辺学童保育所と丹波市第二学童保育所について、それぞれ学校敷地及び校舎への移転のための整備を行います。朝和校区では、平成27年度に公民館を活用し、地域の皆さまのご協力により工作教室などを行った「サタデースクールてんり」を、平成28年度には日頃通いなれている朝和小学校内で実施する予定です。
 生徒数の減少が続き、複式学級を実施せざるを得なくなった福住小中学校では、専属の外国語指導助手を配置し、少人数学習を活かした英語学習やICTを活用した学習を行います。「高原地区街づくり協議会」での議論の中で、他校区の生徒や保護者からも選ばれる学校づくりを行っていき、通学手段の確保等引き続いて検討課題があるところですが、近い将来に福住小中学校を全校区から通学できる「小規模特認校制度」の導入も検討しています。
 これらは、地方創生との関連の中で子育て支援や教育において企図している事業の一端であり、何れも少数の校区に限定されている「試行段階」のものが多い状況でありますが、学校、保護者、地域、行政の間の役割・責任分担に関する既成概念にとらわれることなく、取組みを進めて参ります。また、教育現場において教職員に過度の負担がかかっている状況を改善するため、スクールサポート教員の大幅増員、幼稚園での保育サポート教員の増員を実施いたします。

4.「垣根を越えた連携・協働で、暮らしやすく、住み続けたいまちをつくる」

 第4の柱は、「垣根を越えた連携・協働で、暮らしやすく、住み続けたいまちをつくる」です。健康寿命の延伸、医療と介護が連携した地域包括ケアの推進、防災や地域公共交通をはじめとする、誰もが安心して暮らし続けることができる街づくり、また環境保全を含めた持続可能なゴミ処理体制の確立などは、担当部署に関わらず「チーム天理市役所」で取り組むことはもちろん、行政だけでなく地域の皆さまとの協働、あるいは市町村の行政区分を超えた連携が不可欠です。
 健康づくりについては、新天理市立メディカルセンターが、今月(3月)竣工し、4月1日にオープンいたします。内科、外科、婦人科、小児科の治療に加え、旧市立病院から高い評価を得ていた睡眠呼吸障害センターを備えています。また、新メディカルセンターでは予防を重視して健診機能を特に強化し、健診専用のホールや婦人科専用の待合を設置し、人間ドック、脳ドック、生活習慣病予防健診、乳がん及び子宮がん検診、各種ガン検診を実施、新設の脳ドックでは脳疾患の早期発見が可能な施設となっています。また、休日応急診療所を併設したことにより、365日の診療が可能になっただけでなく、運営いただく天理地区医師会との連携強化を図っています。また、2階には介護予防教室等を開催する地域包括ケア広場や、健康と介護の相談室「まちかど相談室」を備え、医療と介護関係者の橋渡しを担う複合施設として参ります。高齢者が住み慣れたまちで安心して暮らしていけるよう、新メディカルセンターを在宅医療・介護連携拠点としてICT(情報通信技術)を活用した地域医療情報共有ツールを導入し、医師・居宅(ケアマネ)・訪問看護・施設などをネットワークでつなげていきます。
 「まちかど相談室」については、旧福住幼稚園のテレワーク機能を活用することで、福住からテレビ電話により遠隔での健康相談を行える試験事業を行います。また、民間の投資手法を活用して公共施策を進める手法として、最近世界的に注目されている「ソーシャル・インパクト・ボンド」事業の一つとして、平成27年度に慶應義塾大学や公文教育研究会と連携して実施した認知症予防のための脳活教育を、新メディカルセンターを活用して実施します。また、参加者の交流促進や参加意欲の向上のため、市内民間温泉施設との連携も進める考えです。
 また、自治体間連携により、予算を合理化しながら相互の市民サービスを向上させることを目的とした国の「定住自立圏構想」に基づき、山添村、川西町、三宅町と本市で平成27年度発足した「大和まほろば広域定住自立圏」の取組みとして、相互の公共施設の利用促進、スクールカウンセラーや移動図書館車巡回拡大事業を行う他、特に川西町との間でコミュニティバスの相互乗り入れを平成28年度中に実施するために調整を行います。特に、コミュニティバスは、これまで公共交通手段に10分以上の徒歩移動でアクセスできない交通空白地帯を「埋める」ことに主眼が置かれてきましたが、これからは高齢者の皆さまの自動車運転免許証返納も推奨されている中で、コミュニティバスのみの完結性を重視せず、鉄道やバス路線との補完性を考慮しながら、行政界を跨いで実際の移動ニーズに即した見直しを行い、暮らし続けられる街を「足」の点で支えるツールとして、多機能化も含めた検討を行いたいと考えています。
 そして、私たちが健康で衛生的な生活を日々営むうえで不可欠な業務であり、環境保全や、私たちの暮らしを支える財源合理化の上で最大かつ最重要の事業は、広域化による持続可能なゴミ処理体制の確立でございます。
 これまで、本施政方針において様々な施策を縷々述べましたが、私が市政をお預かりする中で、何としても成し遂げなければならない、本件プロジェクトを実現するために、私は今日この職責にあるとすら認識しています。
 先ずは、さる12月議会において、本市議会をはじめ参加10市町村の全市町村議会において、本件の意義をご理解いただき、「山辺・県北西部広域環境衛生組合」の設立に御議決を賜りましたことに、改めて深甚なる感謝を申し上げます。4月より本事務組合としてプロジェクトを推進して参る中で、新施設の建設稼働により、予定地及び周辺地域において、空気や水、交通や景観など環境に影響を及ぼす恐れのあるあらゆる観点から法定基準等を基に、健康被害等の環境上の負荷がかからないことを、事前に調査・予測・評価を行う環境アセスメント事業を4年間かけて実施する予定です。なお、施設稼働後についても法定基準等は拘束力を持っており、基準を上回った状態での稼働は違法行為となりあり得ません。
 併わせて、新施設の具体的な構想や計画策定に進捗がある毎に、予定地周辺地域の住民の皆さまをはじめ市民に情報を公開し、説明を行い、ご疑問等にお答えしていくことは、私を含む市行政にとって最も重要な責務であると認識しており、何事にも優先して実施して参ります。今後、自主規制値の設定、排気ガスや水質データの情報公開を含む環境保全のあり方については、有識者に加えて地域のご代表にも議論に参加を願い、また、広域化のスケールメリットを地元の振興につなげるためのプロジェクトを検討するための新たな「街づくり協議会」もできるだけ早期に発足を目指して参ります。
 また、予定地周辺の振興に関し、本市だけでなく参加10市町村が事務組合全体として等しく責任を負うという点につき、これまでも基本的な方向性を確認してきております。平成32年度以降の新施設建設の時期に合せて、振興事業を実施するための原資を積み上げる基金の設置可能性を含め、具体的な負担方法についての検討を、平成28年度に実施して参る考えです。

 以上、新年度の施政方針及び重点項目の概要を申し上げました。4つの柱は、いずれも重要であり、支え合い循環する関係にあります。1つの柱を太くするために、他の柱の予算を犠牲にする、例えば駅前広場等のハードの整備事業が他の教育福祉などの施策を後退させ、予算を削減させるといった事態は、これまでもありませんし、これからもあり得ません。暮らしの充実を無視したハード整備には全く意味がないと考えており、私どもが進める整備事業は、いかにすれば天理の暮らしが豊かになるか、政策間の連携に寄与し、「生き金」と言えるかを精査した上で、市議会にお諮りしているからでございます。
 「天理市まち・ひと・しごと創生総合戦略」に基づき、サトの豊かさとマチの魅力を活かして、「これからも住み続けたいまち天理」を目指して、「オール天理」での取組を行うべく「チーム天理市役所」一丸となって精進してまいる所存です。新年度予算へのご理解とご協力を心よりお願い申し上げます。

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